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000:オープニング

 気持ちの良い朝だった。
 身なりは西部のカウボーイとなんら変わりはないが、その垢の溜まった目は日本の黒である。彼の名は静弦太郎。人の身体に余りある能力を持った国家警備機構のエージェントだ。
 いつ寝ていたのかはわからないし、寝る前に何をしていたのかも今は曖昧なままだ。
 不意の睡眠の後、反射的に寝る前のことを考えるのは人間の性だろう。だが、それを思い出せばこそ妙である。
 寝る一歩手前の彼は、「相棒」──アイアンキングとの戦いの最中にあったのだ。だのに、その世紀の戦いをほっぽり出して昼寝するだろうか。自己陶酔はしないが、自分にそれなりの厳しさを置いた自覚のある弦太郎は、そのことが不自然でならなかった。
 たとえば、不自然な点というなら他にもある。
 弦太郎は今自分のいる個室を知らない。一度も見たことがないのだ。自分が寝るベッドと、目の前のテレビモニター、ドアに粗末な壁しかない狭苦しい部屋からは、危機の匂いがする。
 まずは現状把握だ。ベッドから出ないことには何にもならない。自分の身なりは一切変わっていないようだ。服装に差異はなく、強いていえば寝転がるには邪魔なテンガロンハットが掛け布団の上に置かれていることだろうか。
 ……いや、どうやらそれだけではないらしい。テンガロンハットを気にかけて首を曲げたときに、首に冷たい感触を感じた。流石に怪しんで触ってみると、自分の首と指先の間には金属の壁が存在した。ネックレスにしては太い。触った感じでは、飾りのような凹凸感もない。言うならば……金属でできた、首輪だ。


 ビッ、とビデオテープが再生されるような音が小さな部屋に響いた。
 やはり、目の前のテレビからだろう。弦太郎は視線をテレビに向ける。
 先ほどまで電源の落とされていたテレビには、人の顔が鮮明に映されている。ビデオというよりは、弦太郎が来た時系列よりも遥かに後にできる、HDDレコーダーという技術によるものだ。

「静、弦太郎だな?」

 テレビ画面はあらかじめ、弦太郎に語りかけるように録画されている。
 凶悪な目つきをした金髪の外人が、流暢な日本語で弦太郎を睨む。一方で、弦太郎もおおよそ彼と変わらぬ表情であった。違うのは、その外人が安全圏から見下ろす立場にあり、笑みを含ませる余裕があることだろう。弦太郎の表情は警戒心に溢れている。

「誰だい、あんた」
「尚、この映像はあらかじめ録画されたものだ。必要な情報は全てこちらから提供する。質問などは一切受け付けない」

 けっ、と悪態を吐いて弦太郎はテレビ画面を真剣に睨むのをやめた。
 おそらくそれは無駄な行為のひとつだろう。まあ、警戒の様子を崩しはしないが。

「とりあえずは、こうして個室に閉じ込められている人間がお前ひとりではないということを理解しておいてもらいたい。
 お前のほか、同じような個室で映像を見てもらっている人間が何人かいる。まとめて映像を送りたいところだが、それによってちょっとしたパニックを起こしてもらっちゃ困るからな……。人を見るなり殺しにかかるようなバケモノが何人もいるんだ。まあ、あんたなら慣れてると思うがね。普通の人間には耐えられまい」

 やはり、穏やかな話ではないらしい。この男もただの人間には見えないが、弦太郎やこの男とはまだ種類の違うバケモノらしい。
 慣れてるということは、やはりタイタニアンのような人外のことだろうか。

「まあ、本題はここからだ。お前の活躍を見る限りでは、そう取り乱すことでもないだろう? まあ、簡単な話だ────お前達には殺し合いをしてもらう」

 衝撃は受けなかった。この男の目的は知らないが、この場に怪物がいるなら、出会い、殺し合う運命だ。ただ別室に隔離されて、存在を教えられて終わりというのはあまりにも味気ない。
 それに、弦太郎には自分ならば生き延びられるという確信もある。国家警備機構たるもの、日々の鍛錬は甘くない(とはいえ、弦太郎は頻繁にこれをさぼっていた)。

「何度も言うが、簡単なことだ。これからお前らはまた別の場所の移動させられる。そこでお前らにはリュックが渡されるから、その中身を使って敵を倒すのみだ。他にも、食料や水などこちらが必要と考えたものが入ってる。まあ、足らなくなれば他のヤツから奪えばいいだけの話だ」

「それから、お前が今つけているその首輪。それがこの殺し合いのカンフル剤の役割をしている。無理に外そうとしたり、これから移動させられる島から脱出しようとしたりすれば、その首輪が爆発する」

「生き残れるのはたった一人。そのためには殺傷も厭うな。ゲームに反則はないが、ルールを踏み外すと勝手に首輪が爆発して死ぬだけだ。それから、数時間ごとに死亡者の放送を行う。手持ちの名簿で他人の生死を確認してくれ」

「放送では『禁止エリア』システムについても触れる。これは地図上に引いてある線を基準として分けられた64のエリアの中から、選ばれた3つのエリアが立ち入り禁止になる制度だ。これで、何日も隠れてやり過ごすような真似はできない」

 と、粗方必要なルール説明は終わる。
 弦太郎も余計なことを考えずに、説明を頭に入れた。変に正義感や恐怖を働かせて、この説明を聞き逃すよりも、何も考えずに殺し合いについて知ろうとしたほうが有意義である。
 生に近付くには、常に冷静の使いどころを忘れないのは大事なことだ。その遣いどころを忘れないのも弦太郎の長所だろう。
 説明は続く。

「優勝者となるのはひとりだが、厳密に言えばそれは二人にも、或いは全員にもなる。実証はしないが、我々には『他人を生き返らせる力』『他人の願いをかなえる力』があると思ってほしい。優勝者には、この力を我々に一度使わせる権利が与えられる」

 この言葉には興味があるが、残念ながらそれに対する実証はなく、信憑性に欠ける。
 いくら何でも、弦太郎はこんな言葉に乗っかるようなタイプではなかった。

 ────言うならば、この殺し合いで弦太郎が殺すのは悪だけに限られるということだろう。


「では、これからお前らは自動的に移動する。リュックは各自、真っ先に確認しておくように」



 次の瞬間、弦太郎の身体は粒子に変換され、別の場所へと移って行った。
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非公開コメント

No title

オープニング投下乙です。

見せしめはいないんですね。
今回のスバルさんロワは把握している作品が結構あるので
続きも楽しみです。

No title

涼村朔也さん>
見せしめはもう書き飽きたので、基本は見せしめナシです。
ああいうシーンは正直、何度書いても同じパターンしか出てこないし。
プロフィール

藤宮昴

Author:藤宮昴
HN:藤宮昴
16歳の学生

多趣味だけどこのブログではアニメ、特撮、漫画、ゲーム、洋画、邦画、小説等を取り扱います。

たまに日常が舞台のブログになる時もあります。
最近はサクラ大戦、特撮、プリキュアなどのネタがメインです。

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